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ぶんがくじょうのふっこてきていしょうにたいして

文学上の復古的提唱に対して

宮本 百合子

「都新聞」1937(昭和12)年3月8~11日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,051 字 · 12 页

青空文庫

号令をかけて馬にのる人々も、文学的な感情をゆたかにして古事記や万葉集を読むとしたら、結構なことと云わざるを得ないのであるけれども、文化の全面を社会の現実の有様と照らしあわせて眺めると、理解はしかく皮相、単純なところに止まっておられないと思える。佐佐木信綱氏は、ああいう学派の歌人として万葉の専門家であり、研究著書、註解など権威ある労作がある。だが、それらの著作の完成した数年前は、今ほど万葉が一般に注目されていなかった。林房雄氏、小林秀雄氏等が万葉の精神などということは当時なかったのである。

雑誌『コギト』による保田与重郎氏は近頃、以上の人々とは又違った陣立てを考案している。その陣の構えは何と云おうか。昨年二月の二十六日に東京駅前の大通りをずっとつき当りの広場の方へ通った通行人は、あちらを背にして、駅に向った方に前面を向けて整列している一団の兵を、余程後になってから、「今からでもおそくない」と云った方ではなくて云われた方の側であったことを知ったという噂をきいたことがある。

文学の古典研究の陣立てに、こういう兵法のようなものを思い泛ばせるというのは、評論家である保田氏として誇るに足ることであるだろうか。