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ぶんげいじひょう
文芸時評
宮本 百合子
「東京朝日新聞」1932(昭和7)年1月28~31日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,930 字 · 16 页
それに徳永はこの小説で、これまでより一層すらすら読める書きぶりを心がけている。ひどくなめらかな調子に一日一日とうつる工場内の具体的な事実を次から次へと読ます。なるほどプロレタリア文学にはブルジョア文学が習慣づけて来たような作為的なヤマはいらない。然し、共通の利害で密集した大衆の力が現実に高まって、従って主題がある程度まで深化されたモメントというものはあるわけだろう。
われわれは、こまかい具体的情景を書いて行かなければならない。だが、ただ職場でこういった、こんなことがあったと、現象だけを追って書くとすれば、それはほとんど場面だけはプロレタリア文学で方法は自然主義であるとさえいえる。表面にあらわれた個々の現象の底をつらぬく経済的政治的な要因がプロレタリアの立場からしっかりつかまえられ、あらゆる現象がいきいきと動く相互的関係の発展のうちにあつかわれてこそ、始めてプロレタリア文学としての強靭さと、弾力と、美とをもってくる。率直にいって、徳永直のこの二つの小説はしまりがない。主題を、きびしいプロレタリア的観点からそしゃくしぬいたという手ごわさがない。むしろ、文章に気をつかっているのが分る。