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ぶんげいじひょう
文芸時評
宮本 百合子
「報知新聞」1937(昭和12)年8月25~29日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,869 字 · 14 页
をこしらえつつある。農村と都会との分離、対立は文化の面だけでさえ傷ましい裂け口を深めつつある。農村の人々が都会人に対する感情には実にひとくちにいいつくせぬものが籠っているのであるが、それならばといって、都会の住民の九十パーセントは、今日果してどういう現実に生きているのであろうか。
そこには望まずして対立におかれる苦しさの切実なものがある。「日蔭の村」の作者は、この小説の最後を、「都会文明勝利の歌、機械文明のかちどきの合唱」が「小河内の閑寂な昔の姿」を打ちくだいていると結んでいるのであるが、役人の仕打ちを怨み、東京市民を怨みつつ資本主義的な力に踏みにじられる錯綜を記録的に各面からとり上げようとしている作品の結びとして、これは必要なだけの深さと重さとに不足している。長篇が愈々最後の一行と迫ったとき作者は亢奮する。そのペンの勢いで結ばれすぎている。この題材が真にヒューメンな現代の共感で生かされるためには、作者の眼が「日蔭の村」をくまなく観察すると同時に、近代大都市の只中にある様々な「日蔭の町」へ、その社会感情をくばらなければならなかった。この作品で、都会が農村に対する一般的な破壊力としてだけ立ち現れる旧套にとどまったのは遺憾である。