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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

ぐったり疲れて、永い睡眠がいつも決まって発作のあとからしてくるのが常であった。

おあいは、堀がたえ間なく櫛を捜していることを勘づいていたが、なるべく目にふれないようにしておいた。れいの内儀も、あの晩きり尋ねてこなかった。おあいは、このふしぎな櫛を箪笥のなかに収って、再度と取り出して見ようとしなかった。

或る静かな、まだひどく暑くならない午前のことだった。おあいが、ふと庭に出てみると、堀が何時ものように杏の根もとにいたが、ふしぎに垣外に一人の女が立って、杉の新芽立ちの間から庭中を窺っているようだった。よく透してみると、背中に汗のするほど驚いたのである。それは、いつかの晩の内儀でやはり町人づくりの派手な塗下駄で、日傘を差していた。

堀は、ふと目を垣そとに遣ったが、これも不思議そうに、木のあい間から透しながら歩いて行った。顔だけを差し出した妙な寂れた堀の姿は、激しい初夏の光のなかに静かすぎるほど濃い影を地にひいていた。

「ちょいとお尋ねいたしますが、そのちょいとばかり――。」

その声は、きき覚えがあっただけ、おあいはぎくりとした。やはり、いつかの晩の女にちがいないと、そう考えると、そっと庭木の間にからだを匿した。