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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
に凝り上っているものに見えた。一つには彼女が物音を極端におそれたり、一つ事を永く考え込んだりする性質からきているのである。たとえば男の室に、男のいないときに不思議に起る咳の音や、畳ずれのすることや、何か小言をいうらしいけはいなどが、よく空耳を襲うて彼の女をぎっくりさせるのであった。かの女はそのほっそりした弱弱しい顔をあげ、じっと耳をすまして、男の室におこる物音をしかも男のいない日に殆ど癖のようになって聞くのであるが、そういうとき彼女は真青になっておのずから顫えるような気がするのであった。
かの女の眼底にはいつも黒ずんだ男の姿が、はっきりと仕事台に向って終日こつこつと彫りものをしている手つきまでが映っていて、それが異様な単に黒ずんだ影のようになってみえるときと、その顔まで生白く映ってくるときと、また別な余り見たことのない他人のように見えるときとあった。一つの材料に向って毎日彫りものをしている鑿の刃が、ちらちらと鉋屑のなかに光ったり、たくみに彫っては木屑をすくい出したりしているのが、その黙々とした姿と一しょにうつってくるのである。男はいち日、ものも言わず不機嫌に仕事をし、不機嫌に咳をし、不機嫌に日に三度あて一しょに食事をするのであったが、何ひとつ愉しそうな顔をせず、特に何事かを話し合うということがなかった。