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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
その室の特長として映るものは自分の家とは全でかけ放れた明るさをもち、新しさをもち、その上掛軸や活花が整然として飾られているように思われた。何よりもはっきりと目に見えるのは男の姿で、その男がずっと以前に女にして見せた同じい微笑と、同じい胡坐をかいていることと、同じい声音とであった。おなじい微笑をしながら何か話しては、興味そうに、時には喜ばしそうにからだを動かしたりするのが、その手つきにまであらわれてみえた。
男の姿がそれほど明瞭にうつってくるのにひきかえ、女のほうは影のようにぼんやりして、いくら能く見ようとして眼をすえても、だんだん小さくちぢんで遠くなってゆくような気がした。しかしその不分判なむしろ朦朧とした顔つきにも、にんがりと踏みつぶしたような妖艶な微笑がうかんで、ことに黒ずんだ分厚な唇はまるで一疋のいもりのように跳ね返って、はげしい肉情のまとになって見えてくるのであった。その唇を見つめては、酔ったようなふらふらした目をした男が、手を伸ばしては女の手をとろうとしたり、唇に唇を合せようとしたりする苛々しい二つの影が壁を透したふしぎな室のなかに、ずるずると畳擦れの音とともに女の視覚と神経とをすっかり支配しつくしたとき、まるで女はきちんと正しく坐って、気でも狂れたように棒みたいに硬ばっていた。