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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
あまり母親の眼を見ない、つとめてそんな機会を避けようとしているらしかった。お俊は丸い小さい手をさすりながら、
「お前はたんとお話がたまっているでしょうから、お話し。あれからお前のしていたことや、見たこと、それから外にまだ沢山あるでしょうから。」
むすこは黙って折々時計をながめた。むかしから下っている時計が物憂く動いて音を立てていた。
「お前はしかしどこから来たの。それを言ってごらん。」
「あそこから、――」
むすこは初めて返事をして、ちょっと右の手の指を通りの方へさした。母親は顔をよせてもう一度たずねた。
「あそこって、何処、川原かい。」
「ええ、川原。」
「川原のさきはどこを歩いたの。崖の上なの。」
「いいえ。」
「土手からかい。」
「ええ、土手……。」
「それから先きは?」
むすこは「それから先きは忘れてしまった。」
と言った。全く忘れてしまったようなけろりとした顔貌であった。
「だってすぐ土手の上へ出られやしないでしょう、ものに順序があるものよ、たとえば川の上流からとか、かみの崖から下りて来たとかいう道順があるものよ、それをお母さまに聞かせて頂戴。」
「それは忘れた。