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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

「お父さん、もう僕かえろうかしら。」

童子は、立ち止まって言った。

「ほら、もうお食事だろう、あそこに、白い布がかざられたし、みんなが御馳走をこさえている、見えるか。」

「あの円いものは何?」

「くだものさ。花もある、もうすこし温良しくしているんだよ。わかったかな。」

「え。」

童子は、しばらくしてから、きゅうに母親をみあげた。

「僕の時計はまだある?」

「ありますとも、鳩のとんで出るのでしょう、あれならありますとも。」

「あとで見せて?」

「いいとも。」

父と母とはまた顔をあわせた。あたりは全く暗くなった。乳母車の音が微かに表からして来た。

「かえって来たらしいね。」

「車があたらしいからよく軋みますこと。」

母親は、門前へ出た。乳母車の上には小さい女の子が、羽根のある帽子のしたで繊い目を閉じ、すやすやと睡っていた。

「あんまりよくおよってらっしゃるものですから、そっとして参りました。」

そのため遅くなったのだと、下婢は、幌をうしろへしずかにはねながら言った。

「そう、ご苦労でしたね。」

母親は、ぬくまった小鳥のようなからだを抱きあげると、あか児は目をさまし、あたりを見まわしながら、暗くなっているので怖いのか、きゅうに泣き出した。