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うきふね

文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集

泉 鏡花

泉鏡花『文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:浮舟、露萩。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,938 字 · 67 页

青空文庫

この図体で、第一、宝丹を舐めようと云う柄じゃないんですもの。鯱や鯨と掴合って、一角丸を棒で噛ろうと云うまどろすじゃありませんか。」

婦が清い目で、口許に嬉しそうな笑を浮べ、流眄に一寸見て、

「まあ、そうしてお商売は、貴方。」

「船頭でさあね。」

「一寸! 池川さんのお遊び道具の、あの釣船ばかりお漕ぎ遊ばす……」

お師匠さんは御存じだ。

「雑と、人違いですよ。」と眦を伏せてぐっと呑んで、

「申兼ねましたが、もう一杯。丁ど咽喉が渇いて困っていた、と云う処です。」

艶なお師匠さんは、いそいそして、

「お出ばなにいたしましょうね。」

「薬を服みました後ですから、お湯の方が結構です――何ですか、お稽古は日が暮れてからですか。ああ、いや、それで結構。」

辰吉は錆のある粋な笑で、

「ははは、些と厚かましいようですな。」

「沢山おっしゃいまし。――否、最う片手間の、あの、些少の真似事でございます。」

「お呼び申せば座敷へも……?」

「可厭でございますねえ、貴方。」

と片手おがみの指が撓って、

「そんな御義理を遊ばしちゃ、それじゃ私申訳がありません。それで無くってさえ、お通りがかりをお呼び申して、真個に不躾だ、と極りが悪うございましてね、赫々逆上ますほどなんですもの。