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だんそうがん

断層顔

海野 十三

「探偵よみもの」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,033 字 · 33 页

青空文庫

こんな曲った顔、こんな気味の悪い顔は、図鑑にものっていない。いびつな頤は見えるけれど、いびつである筈の頭蓋は茶色の鍔広の中折帽子のために見えない。

老探偵は、いつの間にか相手を小型カメラの中におさめていた。

「おいムサシ君。これからあの人物に、面会を求めてみる」

「逃げ出すようなら取押えましょうか」

「いや、相手の好きなままにして置くさ。機会はまだいくらでもある」

その言葉が終るが早いか、老探偵は通路の角からとび出した。甥はそれを追いかけるようにして進む。

が、老探偵の歩調は、だんだん緩くなっていった。彼の口には、いつの間にかマドロス・パイプが咥えられていた。煙草をすっかりやめた彼にも、仕事の必要からして代用煙草のつまったパイプを嘗めることもある。彼はゆっくりした歩調で、怪漢の前に近づいた。そして遂に足を停めた。

「失礼ですが、谷間シズカさんという方の住居が、このへんにございませんでしょうか」

突然話しかけられて怪漢はびっくりしたらしく、奇怪な顔が更にひん曲ってふしぎな面になったが、男はすぐ手袋をはめた両手で、自分の目から下の顔を蔽った。彼ははげしく左右に首を振った。