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あたらしいアカデミアを

新しいアカデミアを

宮本 百合子

旧き大学の功罪

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,488 字 · 5 页

青空文庫

というのは「うちの息子は学問ができて人物もしっかりしているのに、金がないばかりに大学へやれない。知事や大臣にはなれなくても、せめて軍人になれば出世は力次第だから。」という親心と息子の心を吸収して、百姓の息子でも、軍人ならば大将にだって成れる道として、軍国日本に軍人の道が開かれていたのである。日本の大学は、人類の理性と学問に関するアカデミアであるより以前に、官僚と学閥の悪歴を重ねた。見えない半面で軍国主義日本の基盤を養いつつ……。

尾崎紅葉の「金色夜叉」は、貫一という当時の一高生が、ダイアモンドにつられて彼の愛をすてた恋人お宮を、熱海の海岸で蹴倒す場面を一つのクライマックスとしている。明治も中葉となれば、その官僚主義も学閥も黄金魔力に毒されてゆく。

もし、昔の東大の「よき日よき大学」によきアカデミズムがあったのなら、どうしてケーベル博士は大学の教授控室の空気を全く避けとおしたということが起ったろう。夏目漱石は、学問を好んだし当時の知識人らしく大学を愛していた。彼に好意をもって見られた『新思潮』は久米、芥川その他の赤門出身の文学者であった。けれども、漱石は大学の教授控室になじめなかった。