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あたらしいうしお
新しい潮
宮本 百合子
「女性改造」1949(昭和24)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,682 字 · 13 页
手足をもがれた人々の運命がある。孤児と寡婦の人生がある。戦争の惨禍というものの人間的な深刻さは、侵略謀議者がどのように罰せられようとも、それでつぐないきれない人民生活の傷がのこされるからだ。人が人の命をうばうというおそろしい行為でその罪を罰したところで、東條英機の家族は、あしたのたつきにこまりはしない。三十余万の寡婦と十余万の戦傷不具者の苦しみと孤児の人生は、彼らのところにはない。とくに日本では、あれらの人々の生活は、わたしたちにみえないところにある力によってかばわれるだろう。すでにその一つのきざしはあらわれている。作家の石川達三が、侵略戦争共同謀議者二十五名への判決の行われた翌日、新聞記者に語ったことばはつぎのような意味だった。東條たちにたいしていい気味だとおもうのはまちがっている。日本人みんなに責任がある。将来に期待するしかない、と。
たしかに、いい気味だとおもってすむ程度のなまやさしい犠牲を人民ははらったのではなかった。しかし、日本のみんなが、彼らとおなじようにわるいというのはよくわからない。それは事実でもない。人民は共同謀議によって奴隷のように狩りたてられこそしたが、その謀議に参加するだけの自由さえもっていなかったのだから。