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あたらしきシベリアをよこぎる

新しきシベリアを横切る

宮本 百合子

「女人芸術」1931(昭和6)年1月、2月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 12,232 字 · 25 页

青空文庫

東へ来たらしい景色である。樹にとまっている雪がふっくり柔かくふくらんでいる。

夜食堂車にいたら、四人並びのテーブルの隣りへ坐った男が、パリパリ高い音を立てて焼クロパートカ(野鳥の一種)をたべながら、ちょいと指をなめて、

――シベリアにはもう雪がありましたか?

と自分にきいた。ほんとに! 沿海州を走っているのだ。

食堂車内は今夜賑やかだった。ずっとモスクワから乗りつづけて来たものは長い旅行が明日は終ろうとする前夜の軽い亢奮で。新しく今日乗り込んで来た連中は、列車ではじめての夕飯をたべながら。――(汽車の食堂は普通の食堂より御馳走だ。)シベリアに雪はあるかと訊いた男が通路のむこう側のテーブルでやっぱりクロパートカをたべている伴れの眼鏡に話しかけた。

――どうだね、君んところのは?

目立たぬ位肩をもちあげ、

――まあこんなもんだろう。

――バタはいいが、いかにも腹にこたえないね、尤もそれでいいんだが……

焼クロパートカ半身一皿一ルーブル五十カペイキ也。

あっちこっちのテーブルで知らない者同士が他の土地の天候などきき合っていた。

夜、日本茶を入れてのむのに、車掌のところへ行ってさゆいりのコップを借りたら年上の、党員ではない方の車掌がもしあまったら日本茶を呉れと行った。