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しんまんようものがたり

新万葉物語

伊藤 左千夫

「文章世界 第四卷第二號」1909(明治42)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,832 字 · 10 页

青空文庫

それはこの家の娘お小夜であった。

「おばあさん、あんのこったかい、風も凪げてこのえい日になったのんを戸をあけないで」

こう云ってお小夜は、庭場の雨戸を二三枚がらがらとあける。そこへまた顔にも手にも、墨くろぐろの国吉も走り込んできた。

「姉さん田雀々々、二匹々々」

国吉は手に握った二つの田雀を姉の眼先へ出して見せる。

「誰れかに貰ってきたのかい」

「あんがそうだもんでん、ぶっちめて捕ったんだい」

「ほんとうに」

「ほんとうさまだ」

「ううんお前に捕られる田雀もいるのかねい」

「姉さんこりで五つになった。机の引出しさ三つ取ってあらあ、こりで五つだ姉さん、お母さんに拵えてやるとえいや」

どれと姉が手にとるが否や、国吉は再び背戸の方へ飛び出してしまった。

「おばあさん、蒲団から煙が出てるよ」

お小夜は頭巾を脱ぎながら座敷へ上った。お祖母さんは、炬燵の蒲団を跳ねて、けぶりかかった炭を一つ摘まみ出す。

「お前早かったない、寒かったっぺい、炬燵で一あたりあたれま」

「ああにお祖母さん、帰りにゃね風が凪げたかっね、寒いどこでなかったえ」

「ほんに風が凪げたない。お母も寝入ってるよ。あれではあ、えいだっぺいよ」