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しんまんようものがたり
新万葉物語
伊藤 左千夫
「文章世界 第四卷第二號」1909(明治42)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,832 字 · 10 页
木立の隙から園部の家の屋根瓦がちらちら光って見える。
「三郎さんは厭な人どころではないけれど、あんな立派な家の人だから、旦那様やお母さんはあんなむずかしそうな人だから、何だか気味が悪い」お小夜は胸の動悸をはずませて考え込む、米を研ぐ手も上の空に動かしてる。
「私といっしょに耕作するって、ほんとに三郎さんはそんな気かしら、三郎さんがほんとにそんな気ならばいくら嬉しいか知れぬけれど……大学校を卒業した、園部の三男様が、私といっしょに耕作するって、あんだかほんとにできねい。どうしたもんかなあ……」お小夜は研ぎ終った米に、いま一釣瓶の水を注いで、それなり立って考えてる。考えは先から先へ果しがないのである。
「姉さん……姉さん、田雀を拵えてくっだい、姉さんてば」
お小夜は国吉に呼立てられ、はっとして病母のことに思いかえった。それから手早に雀を拵え、小皿に盛るほどもない小鳥を煮て、すべての夕食を調えた。病母も火の端へ連れ出して四人が心持よく食事をした。
祖母も病母も小鳥がうまいうまいと悦んだので、国吉はおれがおれがと得意にぶっちめの話をする。こうしたところを見れば、誰の顔にも不満足な色はない。