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しんせかいのとみ

新世界の富

宮本 百合子

「ソヴェト文化」創刊号、1946(昭和21)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,233 字 · 7 页

青空文庫

だろう。

私の目の前には、ヴォルガ河が見えた。ヴォルガからスターリングラードへ入る埠頭の景色が思い出された。包囲されているときレーニングラードは、その美しい大通りと面白い数々の橋とでつい目の前に浮んできた。モスクワへ侵入軍が迫るという時、私はどんな憤りを以って侵入者の近寄る足音を想像したろう。そして、いつも想った。私がモスクワにいたころ、逢った幾人かの作家たち、ピオニェールたち、労働者たちは今日、どんな戦線にたっているであろうかと。

一九一七年から数年の間ソヴェト同盟の到るところで、国内戦が行われていた。飢餓があった。寒さとすべての不如意があった。それにもかかわらず、新しい社会に生れ変ったソヴェトの人々は、建設の熱意に溢れて、あらゆる面に自分たちの創造力を発揮した。戦法に於て驚くべきパルチザン闘争をした労働者、農民たちは、文化の面で全く新しい文学作品を送りだした。一人一人の人が当時のソヴェト同盟に於ては新社会建設の英雄であり、自身として喜びと誇りをもって語るべき何物かを持っていたのであった。

私が最も知りたく思ったことは一九四一年から始った祖国防衛戦の英雄的な経験と世界史的なその勝利との経験は、どんな新しいソヴェトの文学を生みだしているであろうかということであった。