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しんにゅうせい

新入生

宮本 百合子

「日本学芸新聞」1940(昭和15)年4月20日号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,936 字 · 4 页

青空文庫

中年の女の声で、余り甲高にとりみだしておろおろ物を云っているので、何ごとかとつい注意をひかれたら、その電話は子供の先生へ母親が何か紛失物の申しわけをしているのであった。くりかえし哀願するように、どうぞもうこの一週間だけ御容赦下さいませ。

お恥しゅうございますが何しろ私もつい顛倒しておりますものですから……ハ? はい、はい。本年はどうもあの方が特別おやかましいということだもんでございますから、本当にもう……。と上気した眼色が察しられる声の様子である。では、どうぞあしからず、御免下さいませ、とハンケチを握って汗ばんだ面ざしでボックスから出て来たひとを見て、私は何とも云えない気がした。電話さえやっとかけている母親のようにとりつめた物言いをしていたその女のひとの姿を見れば、袴をはき、上被りをつけている。近所にある女学校の女先生なのであった。

先生という職業にかかわらず、子供の入学試験でおろおろしている一人の母親の心をむき出して物を云っていたことに、私は好意と気の毒とを強く感じた。そして、そんなに女親をとり乱させる試験というものをいやに感じた。

舟橋聖一氏が四月号の『文芸』