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にいづまのしゅき

新妻の手記

豊島 与志雄

「再建評価」1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,807 字 · 22 页

青空文庫

母なら、万事先のことを心得てるし、もともと伯父さまからも母への頼みなのである。

吉川も少し当惑してる風だった。

「どうしてお母さまはお嫌なんでしょう。」と私は尋ねてみた。「なにか気まずいことでもおありになるのかしら。」

「そんなことはない筈だ。いつも往き来してるんだからね。」

「忙しいのがお嫌な筈もありませんわね。働くことが好きだと言っていらしたんですもの。」

「むしろ、何にもしないでじっとしてるのが嫌な方だよ。」

「あたしによその家を見学させるおつもりでもないでしょう。」

「そんなことはないだろう。」

「よその家に泊るのがお嫌なのかしら。」

「僕もそうかと思って、聞いてみたら、駒込の内には二度ばかり泊ったことがあるじゃないかと、逆襲されちゃったよ。」

「あたしには分らないわ。」

「僕にもよく分らない。だが、長く家を空けるのが嫌なのかも知れない。一日か二日ならいいけれどねえと、お母さんは言ったよ。」

とにかく、母の気持ちを穿鑿したってどうにもならないことだった。そして結局、私が代りに行くことを承諾するより外はなかった。然し伯父さまの方へは、その旨を打ち合せておかなければいけなかった。