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にいづまのしゅき

新妻の手記

豊島 与志雄

「再建評価」1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,807 字 · 22 页

青空文庫

たいへん憤慨してるようだった。

「わたしの言ったことを、そのままよく伝えておけ、と伯父さんは言ったけれど、僕にも、なんだかよく腑に落ちないんだ。伯父さんはいったい、堅っ苦しすぎる。なにも、僕を叱りつけなくってもよさそうだ。」

吉川の方で憤慨していた。伯父さまの言葉をそのまま伝えたのも、一つの欝憤晴らしだったのだろう。――然し私には、伯父さまの言ったことが理解出来る気がした。

みんな黙り込んでしまった。母は溜息をついて、冷えきった紅茶に酒を垂らした。

「分りました。」と母は声を抑えて言った。「あちらでそのつもりならこちらでも、もう留守居なんかに行ってやりません。」

それから間を置いて、少し震える声で言った。

「わたしは隠居しますよ。ええ、隠居しますとも。」

母まで怒ってるようで、もうめちゃくちゃだった。私には取りなすすべがなかった。

母は黙って寝室へ去り、吉川はまた酒を飲んで、同じく黙って寝室へ去った。私は後片付けをして、炬燵でしばらく考えこんだ。家庭の雰囲気がばらばらになったような、そしてへんにしみじみとした夜だった。このような夜は、嫁いで来て初めてのことである。