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にいじましげるちょ『しゃかいうんどうしそうし』しょひょう

新島繁著『社会運動思想史』書評

宮本 百合子

「唯物論研究」1937(昭和12)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,384 字 · 5 页

青空文庫

東洋の足どりをその大略に於てとり入れることは果して絶対に不可能であったろうか。特に今日の東半球の波瀾は、読者の心に渇望に近いその要求を呼びさましているのである。

私たちの常識が受けている苦痛は、過去の歴史が、いつも地球を西と東とにわけて語られている点である。東西を一貫し互に照応し合う歴史的現実として綜合的に掴んで示されていないことにある。この本の著者の人間的感情と世界観とは、西と東との区分を踏襲しようとする保守性などを持たないことは自明である。もしこの次にこの種の労作が期待されるのであったら、一読者の希望として、東洋をありきたりの東洋篇に分けず、東西相照し合う立体的関係に於て、この社会運動思想史の裡に綯いまぜて、東洋の断面をも示されたら、さぞ愉快であろうと思う。

更に、この著者の温い情緒と意志とによるより高い業績への期待の上に立って云わせて貰えば、この本は、著者の善意の量と必ずしも匹敵するだけ、技術的にうまく書かれているとは云えないのではなかろうか。素人考えで云えば、整理のしかたに幾分の混雑がある。著者は自身の勉強によって、それぞれの権威者の労作からの引用を率直に利用している。