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しんねんざっそ

新年雑俎

寺田 寅彦

「一橋新聞」1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,034 字 · 6 页

青空文庫

珍肴として持出され、そうして賞味され享楽されたものであろうという臆説が多数の承認を得たようであった。その後何年か後の正月にも前のことを忘れていてまた同じ問題を持出し、同じようなことを云ってみんなで気が付いて笑ってしまったことがある。その後正月の吉例にまたわざと同じ事を話して笑ったりしたこともあった。

母が亡くなってから、いつとはなしに榧、勝栗、小殿原が正月の食卓の上に現われなくなった。そうして、それが現われなくなったことを誰も意識しなくなって来た。

自分の子供等が今の自分ぐらいの年配になる頃には、ことによるともう正月に雑煮を喰うという習慣もおおかた忘れられて、そうしてその頃の年取った随筆家が「雑煮の追憶」でも一九六五年あたりの新年号に書くことになるかもしれない。そう思うと少し淋しい心持もするのである。

(昭和十年一月『一橋新聞』)