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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

」

心配して走って来たお君ちゃんや、二三人の自動車の運転手達が来ると、面白いテロリストはあわてて路地の中へ消えて行ってしまった。こんな商売なんて止めてしまいたいと思う……。それでも、北海道から来たお父さんの手紙には、今は帰る旅費もないから、少しでもよい送ってくれと云う長い手紙だ。寒さには耐えられないお父さん、どうしても四五十円は送ってあげなければならぬ。少し働いたら、私も北海道へ渡って、お父さん達といっそ行商してまわってみようかしらとも思う。おでん屋の屋台に首を突っ込んで、箸につみれを突きさした初ちゃんが店の灯を消して一生懸命茶飯をたべていた。私も興奮した後のふるえを鎮めながら、エプロンを君ちゃんにはずしてもらうと、おでんを肴に、酒を一本つけて貰った。

*

(十二月×日)

浅章はいい処だ。

浅草はいつ来てもよいところだ……。テンポの早い灯の中をグルリ、グルリ、私は放浪のカチュウシャです。長いことクリームを塗らない顔は瀬戸物のように固くなって、安酒に酔った私は誰もおそろしいものがない。ああ一人の酔いどれ女でございます。酒に酔えば泣きじょうこ、痺れて手も足もばらばらになってしまいそうなこの気持ちのすさまじさ……酒でも呑まなければあんまり世間は馬鹿らしくて、まともな顔をしては通れない。