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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

あんなに美しかった女性群が、たった二三日のうちに、みんな灰っぽくなってしまって、桃色の蹴出しなんかを出して裸足で歩いているのだ。

十二社についた時は日暮れだった。本郷からここまで四里はあるだろう。私は棒のようにつっぱった足を、父達の間借りの家へ運んだ。

「まあ入れ違いですよ。今日引っ越していらっしたんですよ。」

「まあ、こんな騒ぎにですか……」

「いいえ私達が、ここをたたんで帰国しますから。」

私は呆然としてしまった。番地も何も聞いておかなかったと云う関西者らしい薄情さを持った髪のうすいこの女を憎らしく思った。私は堤の上の水道のそばに、米の風呂敷を投げるようにおろすと、そこへごろりと横になった。涙がにじんできて仕方がない。遠くつづいた堤のうまごやしの花は、兵隊のように皆地べたにしゃがんでいる。

星が光りだした。野宿をするべく心をきめた私は、なるべく人の多いところの方へ堤を降りて行くと、とっつきの歪んだ床屋の前にポプラで囲まれた広場があった。そこには、二三の小家族が群れていた。私がそこへ行くと、「本郷から、大変でしたね……」と、人のいい床屋のお上さんは店からアンペラを持って来て、私の為めに寝床をつくってくれたりした。