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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页
私の聯想は舌の上で涙っぽい砂糖に変ってしまった。しっかりと目をつぶって、切手をはらない吉田氏への手紙をポストに投げる。新潮社気付で送ったけれど、一笑されるかもしれない。三上氏への手紙は破る。とても華やかに暮している人に、こんな小さな現実なんて、消えてなくなるかも知れないもの――。身近にある人の事なんか妙にかすんでしまってくる。綿菓子のじいさんは、この寒空に雨が煙っているのに、何時までもガラガラと真鍮の車をまわしていた。ベンチに腰をかけて雨を灰のようにかぶって綿菓子をなめている女、その女の眼には遠い古里と、お母さんと男のことと、私のかんがえなんて、こんなくだらない郷愁しかないのだ!
(三月×日)
昼夜帯と本を二三冊売って二円十銭つくる。本屋さんが家までついて来て云う事には、「お家さえ判っておりませば、又頂きに上ります。」どういたしまして、私の押入れの中はマニア作家の頭のように、がらくたばかりですよ。
昼。
浅草へ行った。浅草はちっぽけな都会心から離れた楽土です。そんなことをどっかの屋根裏作家が云いました。浅草は下品で鼻もちがならぬとね。どのお方も一カ月せっせと豚のように食っているものだから、頭ばかり厖大になって、シネマとシャアローとエロチックか、顔を鏡にてらしあわせてとっくりとよくお考えの程を……ところで浅草