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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页
楽隊は鳴りひびく。風はまことに涼やかで、私のおっぱいが一貫目もあるほど重い。感性の気違い。一目みただけで、この娘、売物と云う表情をしている、安来節の看板に凭れて休む。何とも陽気な只ならぬ気配で、床をふみならす音、口笛を吹きたてる群集。あらえっさっさアのソプラノ合唱。日本の歌は原始的で、肉体的だ。のぼせあがっている。何もかもすべて、すべてがのぼせあがっている。
鯉のぼりのようなのぼせかただ。たしなみのいいずぼんをはく事がきらいで、下帯一つで歩いている。もともとは原始民族なのだけど、一寸かぶれて火ぶくれをおこして来たのだ。
かんたんな火ぶくれなのよ、ねえ、塗り薬でかためて調法であろう……。苦悩を売りものにしてみたところで、もともと偽の文明。第一イルミネーションの光りの方がむじひだ。皮を剥いだ、底の底まで見透せる妙な光りかたである。美人が少しも美人にはみえない。光りの空、息苦しい光彩の波の中に、人はひしめきあっている。私もひしめきあっている。
なるほど、日本は黄金島!
*
(七月×日)
山のように厚いノートはないものか、枕のようにでっかいノート。