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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

詩を書いていたところで、一生うだつがあがらないし、第一飢えて干乾しになるより仕方がない。私が、栗島澄子ほどの美人であるならば、もっと倖せな生き方もあったであろう……。友谷さんもきれいな御婦人だ。このひとには全身に自信がみなぎっている。浅黒い肌ではあるけれども、その肌の色は野性の果物の匂いがしている。私の裸は金太郎そっくり。只、ぶくぶくと肥っている。お尻の大きいのは、下品なしょうこだ。うまいものを食べている訳ではないけれど、よくふとってゆく。ぶくぶくによく肥る。

友谷さんはかたねりの白粉を首筋につけている。浅黒い肌が雲のように淡く消えてゆく。久しく、白粉をつけた事がないので、私は男の子のように鏡の前に立って体操をしてみる。ふっと、このまま馳って電車道まで歩いたらおかしいだろうなと思う。

裸で道中なるものか……何かの唄にあったけれども、誰も好きだと云ってくれなければ、私はその男のひとの前で、裸で泣いてみようかと思う……。

風呂のかえり、友谷さんと、団子坂の菊そばに寄る。ざるそばの海苔の香が素敵。空もからりとして好晴なり。庭の大輪の白い菊の花が、そうめんのように、白い紙の首輪の上に開いている。