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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

はりとばしてくれ

そしてはいているスリッパも飛ばしてくれ

私はゆっくり眠りたいのだ。

落ちつかない寝床の中で、私はこんな詩を頭に描いた。下で三時の鳩時計が鳴っている。

*

(六月×日)

世界は星と人とより成る。エミイル・ヴェルハアレンの「世界」と云う詩を読んでいるとこんな事が書いてあった。何もかもあくびばかりの世の中である。私はこの小心者の詩人をケイベツしてやりましょう。人よ、攀じ難いあの山がいかに高いとても、飛躍の念さえ切ならば、恐れるなかれ不可能の、金の駿馬をせめたてよ。――実につまらない詩だけれども、才子と見えて実に巧い言葉を知っている。金の駿馬をせめたてよか……窓を横ぎって紅い風船が飛んで行く。呆然たり、呆然たり、呆然たりか……。何と住みにくい浮世でございましょう。

故郷より手紙が来る。

――現金主義になって、自分の口すぎ位はこっちに心配をかけないでくれ。才と云うものに自惚れてはならない。お母さんも、大分衰えている。一度帰っておいで、お前のブラブラ主義には不賛成です。――父より五円の為替。私は五円の為替を膝において、おありがとうござります。