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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
長谷川時雨『新編 近代美人伝 (上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治美人伝、明治大正美人追憶、樋口一葉、一世お鯉、大橋須磨子、竹本綾之助、豊竹呂昇、平塚明子(らいてう)、松井須磨子、芳川鎌子。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 页
それが私には大変よい感じを与えたのであった。可愛いところのある女だと思った。
自分のことと須磨子の事件とがひとつになって、新聞を見ていても目の裏が火のように熱く痛くなった。彼女が臨終七時間前に撮したという「カルメン」の写真は、彼女の扮装のうちでもうつくしい方であるが、心なしか見る目に寂しげな影が濃く出ている。どうした事かそのおりばかりは、写真を撮るのを嫌がって泣いたのを、例の我儘だとばかり思って、誰れも死ぬ覚悟をしている人だとは知らないので、「そんな事をいわないで」といって無理に撮らせてもらったのだというが、死の前に写した、珍らしい形見の写真になってしまった。きっと彼女の目のなかは、焼けるように痛かったであろう。抱月氏の逝去された翌日、須磨子は明治座の「緑の朝」の狂女になっていて、舞台で慟哭したときの写真も凄美だったが、死の幾時間かまえにこんなに落附いた静美をあらわしているのは、勇者でなければ出来得ない。私は須磨子を生活の勇者だとおもう。
――誰れの手からも離れてゆくこの女の行途を祝福して盛んにしてやりたいから、という旧芸術座脚本部から頼まれた須磨子のための連中は、七草の日に催されるはずであった。