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かえるのゴムぐつ

新編風の又三郎

宮沢 賢治

宮沢賢治『新編風の又三郎』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蛙のゴム靴、虔十公園林、十月の末、谷、二十六夜、やまなし。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,031 字 · 84 页

青空文庫

五六つぶを名残りに落してすばやく引きあげて行ったという風でした。そして陽がさっと落ちて来ました。見上げますと白い雲のきれ間から大きな光る太陽が走って出ていたのです。私どもは思わず歓呼の声をあげました。楢や柏の葉もきらきら光ったのです。

「おい、ここはどの辺だか見て置かないと今度来るときわからないよ。」慶次郎が言いました。

「うん。それから去年のもさがして置かないと。兄さんにでも来て貰おうか。あしたは来れないし。」

「あした学校を下ってからでもいいじゃないか。」慶次郎は私の兄さんには知らせたくない風でした。

「帰りに暗くなるよ。」

「大丈夫さ。とにかくさがして置こう。崖はじきだろうか。」

私たちは籠はそこへ置いたまま崖の方へ歩いて行きました。そしたらまだまだと思っていた崖がもうすぐ眼の前に出ましたので私はぎくっとして手をひろげて慶次郎の来るのをとめました。

「もう崖だよ。あぶない。」

慶次郎ははじめて崖を見たらしくいかにもどきっとしたらしくしばらくなんにも云いませんでした。

「おい、やっぱり、すると、あすこは去年のところだよ。」私は言いました。

「うん。」慶次郎は少しつまらないというようにうなずきました。