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ほうそくについて

方則について

寺田 寅彦

「理学界 第十三巻第四号」1915(大正4)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,493 字 · 17 页

青空文庫

近似的の方則をどこまでも適用せんとして失敗し、「理論と実際の齟齬」という標語を真向にかざして学者を毛嫌いする世人の少なくないのは、これらの方則の近似的な事を忘れているためである場合もある。それは別問題として、厳密な意味において普遍的な正確な方則が可能であろうか。方則というものの成り立ちが前に述べたようなものであってみれば、すべての方則は近似的のものと云わなければなるまい。少なくとも近似的で無いという証拠はないようである。重力の方則は海王星の軌道以内には適用されるが、固体分子間の距離においても同様であろうか。この距離においては吾人は種々の場合に別の方則に従う凝集力を考えたくなる。この凝集力と重力とは如何なる関係があるだろうか。荷電導体内部における電場の零なる事からクーロンの方則の厳密な事を証するが常であるが、吾人の実験し得る導体の大きさに制限のある事を忘れてはなるまい。この方則が電子間の距離まで適用されるだろうか。銀河の近辺までも同様であろうか。これに対する確答はまだない。

これらの引斥力が自乗反比例という簡単な言葉で表わされるのは驚くべき事であるというよりは、むしろかくのごとく簡単に云い表わし得る言葉があるのが驚くべき事だとピアソンは云っている。