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りょかくきじけん

旅客機事件

大庭 武年

「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,209 字 · 21 页

青空文庫

帰って来たのは正確に十一時二十分。そして、練習機と肩を並べたのが十一時二十四分。N原の上を通過したのが十一時三十二分頃であった。さすれば、秀岡の惨殺されたのは、三枝が操縦室に帰って後の事となり、三枝が二度と操縦室から出なかった以上、三枝は秀岡を殺した犯人ではなくなる筈ではないか!

「兎に角、三枝は僕の期待を裏切らなかった」――池内は雀躍した。だがそれを地上の人達に証明するにはどうしたらいいのか? 池内は考えざるを得なかった。

がその翌日。

池内は緊張の下に、隠し切れない喜びの顔色を泛べ乍ら、H警察署の召喚に応じた。今度は相手が検事だった。池内はすっかり自信ある態度で次のようにのべた。

「――今、容疑者は二名います。然し実際の所は三枝は犯人ではないのですが、彼には不孝にしてアリバイがないので証明出来ないでいます。けれど、これを別の方面から推しすすめてみると、或いは自然とそれが証明される結果になるかも知れないと思います。ではどう考えたらいいか? 即ち綿井氏はどうして死んだかと言う事です。署内では第一に自殺説、第二に他殺説となっているようですが、実際に於て綿井氏は自殺する心算で飛行機に乗っていたのですし、又金を盗んだとしてはそれが屍体から発見されないのですから、第一の説も考えられない事もありますまい。