轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
たびやくしゃのつまより
旅役者の妻より
矢田 津世子
「文学界」1934(昭和9)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,566 字 · 14 页
丁度、常磐座へかかっていた沢村海老蔵一座に話してみたところ、役者の足りないところとて早速の承諾、良人も新らしい希望にもえ立って一座の人となりました。
思えば、このわたくしが小娘の頃、良人の舞台姿にこがれて夜毎々々通いづめ、いま奥様の心情をその当時のわたくしに移しかえてみぬ訳ではありませんが、何んとしても殺し切れないものは嫉妬の虫ばかり、それからは奥様とわたくし共の間がしっくりゆかず、一座が福島を旅立つにつれて、わたくし共もお邸をおいとますることになりましたが、別れしなに奥様は鶴江に何か買うてくれ、とて二十円も包んで下さり、何事も何事も水に流して、わたくしも奥様には悪気はもたず、有りがたさにおし頂いてお邸を出たことでございます。
涼しくはなりましたし、良人も病気上りの目立つ程に肥えふとり、鶴江も至って元気にてこの頃ではセリフの覚えも早く、子役で時折り舞台へ出る程になり、幸いの神もようようめぐり来たかと悦んでは居りますものの、ただ気になるのはこのわたくしの躯、顔色がなおったとは言い状、咳は又してもひっきりなし、それにこの頃の胸わるさ吐き気はどうやら子が宿っているらしく、弓子の死んだあとはもう見きりをつけていたものの、この境遇にまた一人ふえられてはどうしたものだろう、出来ぬでもよい身には出来、欲しい人には出来