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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
手ふさげに、解きものをしながらお咲はほんとに安心した心持になっていた。咲二をねかしつけるときよく唄った唄が何となく口を洩れるくらい、彼女は心の「しん」が楽しんでいたのである。昔お江戸が繁盛の時分、流行った数え唄を、伯母さんからおらくが教わったものだ。お咲を始め、死んだたくさんが、この唄でねせつけられたのである、それをまた彼女が咲二を眠らせるに唄う。家庭的な思い出の深いものであった。十ある歌詞を彼女はたった三つ、それも飛び飛びにほか覚えていなかった。
五つとの――よの――え。
猪うたんと勘平が――勘平が――
ねらいすました二つだま
放そうかいな――のな。
七つとの――よの――え。
生酔のふりをした由良之助――由良之助――
主人の逮夜に蛸肴
はさもうかいな――のな。
十うとの――よの――え。
とうとかたきを討ち納め――討ち納め――
主人の墓所にめいめいと
手向きょうかいな――のな。
お咲は何心なく、手を延してさっきまですぐ傍に寝ころんでいた咲二に触ろうとした。けれども、いつの間にかいなくなっている。彼女一人の影坊師が、煤けた障子に写っている。