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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
手紙ばかり、いくら度々よこされても、孝之進は上京する決心が着かなかった。金のできるあてもない。それをただ体ばかり運んでいっても仕方がないと思っていたのである。――藩の近習として、家老の父を持ち、ああいう生活をしていたこの自分が、今、娘の療治に使う金さえ持たないということを考えると、憤りもされない心持がした。どうにもならない時世が、あのときとこのときとの間に、手を拡げていることを孝之進は感じた。が、事態は終に彼を動かしてしまった。あるだけの金を掻き集めて、孝之進は上京したのである。
東京に行ったところで、何一つ自分を喜ばせるものはないのだと、思いきめて来てみると、先ず第一停車場に出迎に来ていた浩を見たときから、それはまるで反対になってしまった。
あんなに小ぽけな、瘠せた小伜であった浩が、自分より大きな、ガッシリと頼もしげな若者になっているのを、むさぼるように見ると、
「オー」
という唸り声が口を突いて出た。
「生意気そうな若者になりおったなあ」
肩を叩きながら、彼は泣き笑いした。
彼の一挙一動はひどく浩の心を刺戟した。身のこなしに老年の衰えが明かになって来た彼、少くとも浩の記憶に遺っていた面影よりは、五年の月日があまり年をよらせ過ぎたように見える彼に対して、浩は痛ましい感にうたれた。