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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

こうなると、彼が正直で、よく働く若い者であったという、普通ならば、賞めらるべき経歴まで、悪罵の種にほか、なろうともしなかった。甲が三つだけ彼を悪く云うと、乙は五つまで、丙は十までと、どんづまりまで悪いだらけにしなければ、気が済まないらしく見える。そして、今まで店内で起った種々の不祥事件――たとえば、ちょっとした金銭の行違いや、顧客先の失敗とかいうこと――は皆、庸之助のせいにされた。何の罪もない彼を、寄ってたかって罵倒するのを、幾分か肯定し、援助するような表情をして黙って聞きすてて置く者などを見ると、浩は擲りつけたいほど、腹が立った。ひどいと思った。けれども、口で云うほど内心では庸之助に対して、好意も悪意も、さほど強くは感じていないことが次第に解って来た。

「あん畜生が、どうこうしやがった」

などと、平常は慎しまなければならない言葉も、或る程度までは思う存分ぶちまけられ、庸之助という主題に、関してだけは、下等な戯言も批評も、かなり黙許されているような店中の空気が、平坦な生活に倦怠している若い彼等を、十分興奮させているのが、浩には分り出した。すべてが興味中心で動いて行く。