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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
馬鹿馬鹿しい心持がして、軽々しく物好きに動かされたことを、我ながら不愉快に思っていると、少しも歩調を緩めないで歩いていた庸之助は、とある一軒の長屋のような小家の前に、ピッタリ足を止めた。暗いなかに、垂れたような軒の下には、建附の悪そうなぼろ格子が半分ほど隙いて見える。
庸之助は、格子に手をかけて、ガタピシいわせると、その物音で、障子をあけて中から出て来たのは、年頃ははっきり分らないが、何にしろ二十代の女であった。きっと赤坊を裸身で抱いた、みすぼらしい宿の女房でも出るだろうと予想していた浩は、つい「オヤオヤ」と思った。ぞんざいな髪形をして、荒い着物の上に細い紐のようなものを巻いている。変だなあと思っていると、女は「オヤ、今晩は。えらいお見かぎりだったねえ……」と云って、「まあお上りなさいよ」と庸之助の肩を叩いた。この瞬間、浩はハッと或ることを思いついた。庸之助に対して、彼は蒸返るような憎しみを感じると同時に、また一方強い好奇心が動かされた。彼はちょっと庸之助の方を見た。そしてその平気な顔を見ると、屈辱と憤怒と羞恥が一塊まりになって、彼の胸のうちで爆発した。