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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

もう小一時間立っている割に今夜は溜らない。気が揉めた。一枚でも多く売らなければ、明日の飯に困る彼は、勢い、一生懸命にならずにいられなかった。動き出した電車を追っかける彼の腰の周囲では、六つも一つなぎにした鈴が、ジャラン、ジャランと耳の痛いほど、響きわたった。電車が混むにつれて、買いても多くなって来る。庸之助は平常の通り醜いほど興奮して、後から後からと止まる車台の間を、鼠のように馳けまわって、自分と同じ側にいる十四ほどの夕刊売りには、一枚でも売らせない算段をした。耳と眼を病的に働かせて、どんな小声の呼かけでも、奥の方に出せずにいる手でも見落すまいとしていたのである。自動車が通り荷車が動いている間に、彼は危険などということは、念頭にも置かなかった。ところが、ちょうど彼が人を満載して動けずにいる車台の下で、今新聞を渡したときである。次の車のどこかで夕刊を呼ぶ声が聞えた。

「オイ、夕刊売りはいないのか?」

彼はまっしぐらに馳け出そうとした、途端、一台の俥が行く手を遮ぎった。ハット思う間に、俥夫の気転で衝突は免がれた。けれども、客はもう他の売り子に取られてしまった。