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ひめくり

日めくり

壺井 栄

「群像」1963(昭和38)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,884 字 · 34 页

青空文庫

「早く」

「はいはい」

湯呑みをさし出すと、

「あついっ!」

「ごめんなさい」

「わかってるじゃないか」

「すみません、あの――」

親たちの前で、熱さ加減をみることをてれたらしい。それにしても声だけはなかなかの元気である。のみ終るとすぐまた横になりかかった。やはりまだ、坐っていることに堪えられないらしい。時間をかけて枕に頭をつけ、海老のようにからだを曲げたままやっと横たわると大きくいきをついた。が彼の元気さはまだ残っているらしく、目をつむったままではあるが、文吉と元子にむかって、

「今日、社長が見舞いにきてくれましてね」

うれしそうだ。それでいつもと様子がちがうのかもしれない。

「そうかね」

と文吉がうけて、ベッドのそばに椅子をよせた。

「休んでるのに、昇給してくれた礼をいいますとね、なに、もうけてるんだから気にするなって――」

「よかったわね」

元子が顔をさしよせていうと、ひろみが尻馬にのって、

「今日は、まだいいことがあったのよ。おすしを食べたのよ」

「ええ!」

思わず元子はひろみをみた。

「鉄火が食べたいといいだしてね、取ったのよ。四つも食べたわ」

「大丈夫?」

元子はぎょっとした。