轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひめくり

日めくり

壺井 栄

「群像」1963(昭和38)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,884 字 · 34 页

青空文庫

このところ元子は、雨が降っても草履をはいていた。転ばないようにするためだった。顔が大きくはれたり、転べば骨の折れやすい副作用をもっている新薬を、病気以来ずっと続けている元子なのであった。腰の骨がことに折れやすいのだという。腰の骨を折ってしまっては、松葉杖も使えないかもしれぬ。そんなことになっては、顔がふくれるのと比べられない不幸である。

山形の家は、石の階段を五段ほど上って、玄関になっている。ベルを押すと、ドアの向う側に小さな足音が乱れて走ってきた。だがドアはゆっくり開いた。

「あ、いらっしゃいませ」

と、山形の母は三尺の狭い土間に下りてきて、

「どうもどうも、この度は――」

と頭を下げながら、千咲をふりかえり、

「ベルが鳴ると母ちゃんかと思うらしいんですよ」

と、袖口を目にあてた。

「そう。おばあちゃんで、わるかったね。さ、いらっしゃい」

両手をさし出すと、千咲はそれをふり払い、笑顔もしない。

「あら、おばあちゃん、もう忘れたの。はい、お土産」

塩せんべいの包みをさし出すと、それだけとってあとじさりをし、山形の母にしがみついていく。まるで仇をでも見つめるように、警戒した目つきである。