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ひめくり

日めくり

壺井 栄

「群像」1963(昭和38)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,884 字 · 34 页

青空文庫

あいにくと、ちょうど、ねんねしかかっていたところでしたの」

「そうですか。わるいところへきましたわね」

「いいえ。でもね、感心してますんですよ。ふたりとも、おとなしくしてましてね。いまはご本をみてさわぎましたけど、いちにち、むりもいわずに、じっとして、このばばと一しょに、家の中にいるんですからね」

ああ、そこをひろみが心配しているのだなと察しながら元子は、

「あのう、千咲ちゃんだけでも、私の方でお預りしましょうか」

「いいえ、せめて子供のめんどうぐらいは私がみますから、どうぞもう。さ、千咲ちゃん、おねんねしましょ」

部屋に引きとった。本をとり上げられて、壮一はまたしめっぽくだまりこんでいる。八十の老婆では、二人の子供でも手が廻りかねるのだろう。

「八十と、五つと、一つか。あんまり世代がはなれすぎてるのね」

さっきからだまって、部屋の隅で夕刊をみている文吉に元子はそっとささやき、

「さ、さ、さ、壮ちゃん。いいことおしえてあげるわね」

だまって顔を上げる壮一に、

「ね、紙とえんぴつとかして。おもしろい歌、おしえてあげる」

壮一はきげんのなおってくる自分にてれでもするようにあごを引き、ええーという口をして紙とえんぴつをもってきた。