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じつげつボール

日月ボール

小川 未明

「国民新聞」1930(昭和5)年5月4日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,923 字 · 6 页

青空文庫

そのうちに、くぎででもさしたか、ひどい音がして、タイヤがパンクしました。清さんは、おどろいて車から降りて、まごまごして、やっと直して動き出そうとして見ると、いつのまにか、女は消えて見えなかったのです。

「まるで、きつねにつままれたようだった。」と、思い出すたびに、清さんは笑いました。

そうかと思うと、あるときはみすぼらしいふうをした、おじいさんが、はいってきて、

「すこし、遠方だが、これだけの金でいってくださらんか。孫が、急病だと知らしてきたのだが……。」と、頼みました。

「まいりましょう。」と、気持ちよくいって、清さんは、おじいさんを乗せていってやりました。

清さんは、働いたお金で、みんなお酒を飲みました。酔っているときには、だれにでも、おもしろい話をしました。しかし、それが、みんなほんとうであると、思えないようなのもありました。子供が好きでしたから、近所の子供たちがよく遊びにやってきました。

「小父さん、僕を自動車に乗せておくれよ。」

子供たちは、わがままをいいました。

「こんど、みんないっしょに乗せて山へでも連れていってやろう。」

「いつ連れていってくれる?」