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にちげつさま
日月様
「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页
そしてモモを見せる女の態度というものは、完全なパンパンの変哲もない態度であり、おかげで私は俄に安心したほどであった。
「君は、じゃア、絵描きの卵でもないのかね」
「まア、それぐらいのことは、私だって、なんとか、かんとか、それも商売よ。でも油絵の二三枚かいたこともあったわよ。あんまり根もないことを云ったんじゃア、この社会じゃア、自分が虚栄だから、人の虚栄を見破るのも敏感なものよ」
話しだすと、先刻までの押し黙った陰鬱さは薄れて、女は案外延び延びと気楽であった。
然し、私には、どうも解せなかった。病院へ麻薬を持って見舞に来た時から、どこにも気違いらしい変ったところはなかった。元々気違いはそうである。私は精神病院で、それを胆に銘じてきた。発作が起きた時でなければ、見分けのつくものではないのである。いわば、あらゆる人間に犯罪者の素質があるように、あらゆる人々に狂人の素質があると考えてもよい。狂人は限度の問題だという見方もありうるほどである。
私は精神病院をでゝ以来、それまでの不眠症にひきかえて、ひどく眠るようになった。尤も、東大から催眠薬を貰っており、これは暁方になってきいてくる性質の催眠薬であった。