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にちげつさま

日月様

坂口 安吾

「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页

青空文庫

それから三年すぎていた。

精神病院で、王子君五郎氏の訪問をうけて私も呆れた。そのときは、附き添いも女房も外出して、私一人であったが、特別私とレンラクのあった人物のほかは、精神病院の錠を下した関所を越え、又、看護婦の認可という関門を越えて、私の病室をつきとめて辿りつくということは不可能なのである。忍術使いと同じぐらい腕力的な侵入方法に練達している各新聞社の社会部記者や写真班すら、みんなお医者さんや看護婦に撃退されて、あえなく退却させられていたのである。

「よく、はいってこられたね」

と、いうと、彼はヘッヘッヘッと笑って、フトコロから品物をとりだした。

「いつもお世話になりまして、お礼もできませんで、これは私の寸志でございます。先生もさだめしお苦しいことだろうと拝察致しまして、私もマア、ちょッと、顔がきくようになりましたもんで、どうやら手に入れて参りました」

「なんですか」

彼は又クスリと笑って、頭をかいて、それから注射の恰好をしてみせた。

「なんだい? ヒロポンかい?」

「ど、どう致しまして。あれです。先生がお用いになっていた例の、麻薬」

私もつくづく呆れてしまった。