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にほんのしょうらい
日本の将来
中谷 宇吉郎
「民族の自立」一時間文庫、新潮社、1953(昭和28)年12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,422 字 · 13 页
問題は、同じ水が、水資源として一国の動力源ともなり、或いは農林産の基本要素ともなるか、またそれが人間生活を根底からくつがえす洪水になるかという、その分岐点にある。その答えは、簡単明瞭であって、水を人間が統御し得るか否かにある。統御し得れば、それは水資源であり、得なければ、それは水害である。
この論に対しては、きっと反対意見が出ることであろう。それは、日本のように天災の多い国では、水害に限らず、台風でも、地震でも、とても人力で何とかしようといっても、不可能のことであるという議論である。
こういう意見は、日本では通ずるかもしれないが、世界的には通用しない。というのは、天災は日本ばかりにあるものではないからである。水害の話のついでに、アメリカの昔の洪水の例をひこう。今日メキシコとの国境に近いカリフォルニア州の南部に、ソールトン湖という湖がある。どの地図にも出ている、ちゃんとした湖であって、面積は、琵琶湖と、ほぼ同じである。ところでこの湖は、昔からあったものではなく、一九〇五年のコロラド河の大氾濫の時に出来た水溜りが、今日まで残っているものである。氾濫当時は、琵琶湖の二倍の面積であったのが、現在は、その半分くらいになっているのである。