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うんめい

日本の文学 3 五重塔・運命

幸田 露伴

幸田露伴『日本の文学 3 五重塔・運命』。同一底本的分册已合并为一书。收入:運命、風流仏。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 100,648 字 · 198 页

青空文庫

太祖の智にして事此に出でず、詔を遺して諸王の情を屈するは解す可からず。人の情屈すれば則ち悦ばず、悦ばざれば則ち怨を懐き他を責むるに至る。怨を懐き他を責むるに至れば、事無きを欲するも得べからず。太祖の人情に通ぜる何ぞ之を知るの明無からん。故に曰く、太祖の遺詔に、諸王の入臨を止むる者は、太祖の為すところにあらず、疑うらくは斉泰黄子澄の輩の仮託するところならんと。斉泰の輩、もとより諸王の帝に利あらざらんことを恐る、詔を矯むるの事も、世其例に乏しからず、是の如きの事、未だ必ずしも無きを保せず。然れども是れ推測の言のみ。真耶、偽耶、太祖の失か、失にあらざるか、斉泰の為か、為にあらざる耶、将又斉泰、遺詔に托して諸王の入京会葬を遏めざる能わざるの勢の存せしか、非耶。建文永楽の間、史に曲筆多し、今新に史徴を得るあるにあらざれば、疑を存せんのみ、確に知る能わざる也。

太祖の崩ぜるは閏五月なり、諸王の入京を遏められて悦ばずして帰れるの後、六月に至って戸部侍郎卓敬というもの、密疏を上る。卓敬字は惟恭、書を読んで十行倶に下ると云われし頴悟聡敏の士、天文地理より律暦兵刑に至るまで究めざること無く、後に成祖をして、国家士を養うこと三十年、唯一卓敬を得たりと歎ぜしめしほどの英才なり。