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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

森鴎外『日本の文学 3 森鴎外(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:阿部一族、山椒大夫、安井夫人、寒山拾得、寒山拾得縁起。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 页

青空文庫

そう思うていてくれい」

「知れたことじゃ。どうなることか知れぬが、おれがもらう知行はおぬしがもらうも同じじゃ」こう言ったぎり権兵衛は腕組みをして顔をしかめた。

「そうじゃ。どうなることか知れぬ。追腹はお許しの出た殉死とは違うなぞという奴があろうて」こう言ったのは四男の五太夫である。

「それは目に見えておる。どういう目に逢うても」こう言いさして三男市太夫は権兵衛の顔を見た。「どういう目に逢うても、兄弟離れ離れに相手にならずに、固まって行こうぞ」

「うん」と権兵衛は言ったが、打ち解けた様子もない。権兵衛は弟どもを心にいたわってはいるが、やさしく物をいわれぬ男である。それに何事も一人で考えて、一人でしたがる。相談というものをめったにしない。それで弥五兵衛も市太夫も念を押したのである。

「兄いさま方が揃うておいでなさるから、お父っさんの悪口は、うかと言われますまい」これは前髪の七之丞が口から出た。女のような声ではあったが、それに強い信念が籠っていたので、一座のものの胸を、暗黒な前途を照らす光明のように照らした。

「どりゃ。おっ母さんに言うて、女子たちに暇乞いをさしょうか」