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はんぎゃく
日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)
矢田 津世子
矢田津世子『日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:反逆、罠を跳び越える女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,512 字 · 34 页
証券部長は一階の席にいなかった。
給仕の知らせで、槇子は、正面の羅紗張りのドアを押した。後で、男達の囁きが起った。
「あの、お呼びでいらっしゃいますか?」
海色の応接室の中で、部長はソファに埋って、昨夜の不足な睡りを補っていた。
「あの、前川ですが……」
「うう、……ああ、あんたかね。さ、其処へ掛けなさい。」
流れかかった涎を慌てて吸い上げると、部長は赤く禿あがった額をてれくさそうに永いこと拭いた。
「何か御用事でも……」
「今、今話すがね。まァ、悠くりと寛いだ方がいいじゃないですか。さ、もっとこっちへいらっしゃい。温かいところへ……」
――成程、慣れたもンだな。この手で事務員達をものにしてたンだな。フフン――
槇子は、白髪染で染たらしい黒すぎる部長の髪を、睫毛の先きで軽蔑した。
「あの、只今利札の方が大変忙しいんでございますけど……」
「何月渡しの利札だね。」
「勿論、十二月でございます。」
「大東製糖も確か十二月だったな。七十八回の五分利国庫……」
「大東でしたら年四期、十月に切ってしまいました。多分東洋製糖のお間違いでございましょう。」
「そ、そうだったな。私は近頃ひどい健忘症になってね。