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しゅんせつせん
日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集
葉山 嘉樹
葉山嘉樹『日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:浚渫船、乳色の靄、生爪を剥ぐ、労働者の居ない船、坑夫の子。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,935 字 · 73 页
それほど、彼女の皮膚は腐っていたのだ。
だが、世界中の「正義なる国家」が連盟して、ただ一つの「不正なる軍国主義的国家」を、やっつけている、船舶好況時代であったから、彼女は立ち上ったのだった。
彼女は、資本主義のアルコールで元気をつけて歩き出した。
こんな風だったから、瀬戸内海などを航行する時、後ろから追い抜こうとする旅客船や、前方から来る汽船や、帆船など、第三金時丸を見ると、厄病神にでも出会ったように、慄え上ってしまった。
彼女は全く酔っ払いだった。彼女の、コムパスは酔眼朦朧たるものであり、彼女の足は蹌々踉々として、天下の大道を横行闊歩したのだ。
素面の者は、質の悪い酔っ払いには相手になっていられない。皆が除けて通るのであった。
彼女は、瀬戸内海を傍若無人に通り抜けた。――尤も、コーターマスター達は、神経衰弱になるほど骨を折った。ギアー(舵器)を廻してから三十分もして方向が利いて来ると云うのだから、瀬戸中で打つからなかったのは、奇蹟だと云ってもよかった。――
彼女は三池港で、船艙一杯に石炭を積んだ。行く先はマニラだった。
船長、機関長、を初めとして、水夫長、火夫長、から、便所掃除人、石炭運び、に至るまで、彼女はその最後の活動を試みるためには、外の船と同様にそれ等の役者を、必要とするのであった。