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にほんぶんかしかん

日本文化私観

坂口 安吾

「現代文学 第五巻第三号」1942(昭和17)年2月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,816 字 · 43 页

青空文庫

僕は祇園の舞妓と猪だとウッカリ答えてしまったのだが――まったくウッカリ答えたのである。なぜなら、出発の晩、京都行きの送別の意味で尾崎士郎に案内され始めて猪を食ったばかりで、もののハズミでウッカリ言ってしまったけれども、第一、猪の肉というものが手軽に入手出来ようなどとは考えていないせいでもあった。ところが、その翌日から毎晩毎晩猪に攻められ、おまけに、猪の味覚が全然僕の嗜好に当てはまるものではないことが、三日目ぐらいに決定的に分ったのである。けれども、我慢して食べなければならなかった。そうして、一方、舞妓の方は、京都へ着いたその当夜、さっそく花見小路のお茶屋に案内されて行ったのだが、そのころ、祇園に三十六人だか七人だかの舞妓がいるということだったが、酔眼朦朧たる眼前へ二十人ぐらいの舞妓達が次から次へと現れた時には、いささか天命と諦らめて観念の眼を閉じる気持になった程である。

僕は舞妓の半分以上を見たわけだったが、これぐらい馬鹿らしい存在はめったにない。特別の教養を仕込まれているのかと思っていたら、そんなものは微塵もなく、踊りも中途半端だし、ターキーとオリエの話ぐらいしか知らないのだ。