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にほんぶんかしかん
日本文化私観
「現代文学 第五巻第三号」1942(昭和17)年2月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,816 字 · 43 页
ここには、世俗の生活を暗示するものがないばかりか、つとめてその反対の生活、非世俗的な思想を表現することに注意が集中されている。それゆえ、又、世俗生活をそのまま宗教としても肯定する真宗の寺域が忽ち俗臭芬々とするのも当然である。
然しながら、真宗の寺(京都の両本願寺)は、古来孤独な思想を暗示してきた寺院建築の様式をそのままかりて、世俗生活を肯定する自家の思想に応用しようとしているから、落着がなく、俗悪である。俗悪なるべきものが俗悪であるのは一向に差支えがないのだが、要は、ユニックな俗悪ぶりが必要だということである。
京都という所は、寺だらけ、名所旧蹟だらけで、二三丁歩くごとに大きな寺域や神域に突き当る。一週間ぐらい滞在のつもりなら、目的をきめて歩くよりも、ただ出鱈目に足の向く方へ歩くのがいい。次から次へ由緒ありげなものが現れ、いくらか心を惹かれたら、名前をきいたり、丁寧に見たりすればいい。狭い街だから、隅から隅まで歩いても、大したことはない。僕は、そういう風にして、時々、歩いた。深草から醍醐、小野の里、山科へ通う峠の路も歩いたし、市街ときては、何処を歩いても迷う心配のない街だから、伏見から歩きはじめて、夕方、北野の天神様にぶつかって慌てたことがあった。